【台風19号】犠牲の48歳歯科医「患者の信頼厚く」 “親友”の犬と散歩が日課 福島・本宮
福島県本宮市では歯科医の曽我祐一さん(48)も自宅の浸水被害で犠牲になった。自分に厳しく丁寧な診察が定評だったという曽我さん。「患者の信頼も厚かったのに…」。勤務先のクリニックの院長(46)は残念そうにつぶやいた。
台風による雨脚が強くなった12日夜、一人暮らしの曽我さんは勤務を終えて自宅に帰った。日付をまたぐ午前0時ごろ、自宅への浸水が始まったとみられ、院長宅に連絡があった。「そちらは大丈夫ですか」。自分よりもクリニックを気遣う様子をみせていた。
その後も、連絡を取り合い、3階建ての頑丈なクリニックへの避難を促すなどしたが、未明に電話がつながらなくなった。院長は警察に連絡。しかし、水かさが増し、近づけなかったという。13日朝、曽我さんは自宅で遺体で見つかった。
曽我さんは東京の出身。院長とは両親同士が知人という縁があり、平成22年に本宮に移り二人三脚で診療に当たってきた。「まじめで寡黙。自分が決めたルールに厳しく、仕事も丁寧で患者さんからも信頼されていた」。院長は語る。
欠かさなかった日課もある。曽我さんが本宮にやってきた年からクリニックで飼い始めた犬の「はっちゃん」との散歩だ。休みの日でも夜になるとクリニックを訪れ、はっちゃんを連れ出した。寡黙な曽我さんが時折話しかけながら1~2時間は歩いていたという。
そのはっちゃんも今では10歳になり、白髪も増えて曽我さんは「生きている間は毎日散歩に行ってあげたい」と話していた。
だが、もう"約束"は果たせない。この2週間、院長がはっちゃんを散歩させている。「これを毎日やってたんだと思うと…。何を話していたのかなぁ」。院長は悲しげな表情を浮かべはっちゃんを見つめた。(橋本昌宗)
Measure
Measure