患者対応、副業で磨く 高松の歯科診療所の衛生士


患者対応、副業で磨く 高松の歯科診療所の衛生士

医療界で働き方改革の取り組みが進むなか、高松市の歯科診療所「みき歯科三越通りクリニック」は歯科衛生士らに副業を積極的に促している。会社員など異業種との交流を通じて、患者とのコミュニケーション能力を磨いてもらうのが狙いだ。産業界でも副業の推進はまだ少数派だが、いち早く副業推進へとかじを切って患者の満足度を高める。

みき歯科三越通りクリニックは歯科衛生士らの副業を認めている(高松市)

同クリニックで働く歯科衛生士の市原真由美さんは、運勢を知る上で日本でなじみが深い「九星気学」の講師という肩書も持つ。休日は会社員、経営者、主婦など20~70代の様々な年齢層の人に九星気学を教えている。

副業の経験があればこそ、市原さんは「患者さんとの話題に事欠かない」と笑顔で話す。同クリニックでは、受付を担当している女性も高松市内でフラダンスを教えている。2018年8月に、就業規則において副業を認めることを明記した。

リクルートキャリア(東京・千代田)が18年9月に実施した調査では、副業・兼業を推進している企業は3.6%、容認は25.2%だった。社員の副業に積極的な企業はまだ一部にとどまるなか、歯科診療所が就業規則に明記してまで取り組むのは、いくつか理由がある。

一つが歯科診療所を取り巻く環境の厳しさだ。厚生労働省の調査によると3月末時点で歯科診療所は全国に約6万8500施設ある。一方、日本フランチャイズチェーン協会の集計をみると同時期のコンビニエンスストアは約5万5800店。歯科診療所はコンビニより多く、過当競争が指摘されている。

こうした状況を踏まえると、患者の満足度を高めていく必要がある。三木武寛院長は「どんな仕事でも、得られるものはある。歯科治療の現場に生かす熱意があれば、副業を認めている」と話す。歯科衛生士などの人材確保でもプラスに働くと考えている。

三木院長は香川県内では珍しい「日本障害者歯科学会認定医」を取得している開業医で、様々な事情で通常の治療を受けられない患者を専門としている。発達障害や歯科治療を怖がる患者が多く訪れる。

治療を嫌がるなどの患者対応として行動調整法という専門的なアプローチの仕方はあるが、人と人とが向き合う以上、医療者の人間力が問われる。だからこそ、副業を通じた人材育成に期待を寄せる。

厚労省によると16年度の歯科診療医療費は2兆8574億円。国民医療費に占める割合は6.8%にすぎないが、決して小さな金額ではない。医療はサービス業ではないが、国民負担が発生している以上、患者満足度を高める取り組みはより一層、必要となる。(辻征弥)

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