新型コロナ: 歯科器具のナカニシ、工場増設 売上高500億円めざす: 日本経済新聞


歯科器具のナカニシ、工場増設 売上高500億円めざす

2021年8月25日 19:36
ナカニシは既存工場の隣接地に新棟「A1+」(右)を建設する(完成イメージ)

歯科治療器具製造のナカニシは栃木県鹿沼市内の工場を増設する。2022年6月竣工予定で、生産能力を最大1.8倍に高める。歯科領域では新型コロナウイルス対策で器具の滅菌需要が世界的に高まっている。20年から5カ年の中期経営計画に掲げた25年売上高500億円の達成に向けた体制作りを急ぐ。

新たな工場棟「A1+」は22年6月竣工を予定し、延べ床面積約5500平方メートル。建設には約18億円投じる。主に歯科治療器具に使う部品の製造を担い、現在部品を作っている「A1」工場の隣に設ける。今回の増設で部品製造部門の延べ床面積は1.4倍の1万9500平方メートルになる予定だ。中西英一社長は「製造工程の効率化で生産能力は1.5~1.8倍に高める」と話す。

20年度に策定した5カ年の中期経営計画に部品工場の拡張も盛り込んでいたが、「当初はもう2年ほど先を見込んでいた」(中西社長)。それを前倒しした背景には新型コロナによる需要拡大がある。

21年1~6月期の連結売上高は230億円で前年同期比68%増。コロナ前の19年1~6月比でも33%増となり、21年上半期は月次ベースでも一昨年を上回る売上高で推移した。売上高を押し上げた要因の一つは新型コロナの感染拡大で歯科治療機器を使うたびに滅菌する必要性が世界的に再認識されたことがある。

世界的には歯を削るハンドピースを使用後に滅菌することが義務化されていない国が多くある。使用後のハンドピースを滅菌している間の予備が必要になるので、歯科医院1軒あたりの購入個数が増えた。滅菌するようになることで、それまでの2~3倍の予備が必要になるという。

国内の歯科医院に対する助成金も需要を拡大する一因となった。医療提供体制の維持のため、感染拡大防止などに関する経費を補助する制度が多く利用された。生産能力を増強し、高まっている需要を確実に取り込みたい狙いがある。

ハンドピースはおよそ5年周期で買い替える必要があるので、滅菌需要によって増えた需要は今後も一定程度続くとみられる。ただ、今後も順風が続くとは言いにくい。一時的な助成金による特需については「すでに国内では反動が出始めており、どれくらい需要が落ちるかは見通しにくい」(中西社長)面もある。

それでも工場を拡張するのは売上高500億円を達成するには生産量を増やすことが欠かせないからだ。中西社長はコロナ特需に頼るだけでなく、同時に新製品開発や営業活動の強化でさらにシェアを拡大し続けなければ目標には届かないとみる。新型コロナ下で活動を抑えていた世界の競合他社が再び勢いづくなか、今後どう戦っていくか。次の戦略が重要になる。

(宇都宮支局 桜井豪)