【医療の窓】歯は自然に治癒することはない 歯科医・緒方秀則さん(熊本日日新聞) - Yahoo!ニュース


【医療の窓】歯は自然に治癒することはない 歯科医・緒方秀則さん

1/24(金) 12:23配信

 世の中には、「歯が痛くならないと歯医者には行かない」という人の方が多いと思う。面倒だし怖いし、音が嫌だし…。気持ちはよく分かる。しかし、歯は自然に治癒しない。

擦り傷や切り傷、骨折は、適切な処置をすればほぼ元に戻る。でも、虫歯はたとえ適切な処置をしたとしても元通りにはならない。欠けた部分や失った歯は、金属やプラスチックで作り治さなければならない。

治療では、俗に言う「歯の神経」の歯髄[ずい]を取ることがある。すると痛みが軽くなり、通院を中断する人が少なくない。だが治療は終わっていない。通院をやめると、歯の中に残った細菌が増えて、感染が広がる。すると、その部分の除去さえ必要になってしまう。

放置すればするほど、感染範囲は広がる。分かりやすく言うと、段ボールに腐ったミカンがあると、周りのミカンもどんどん腐っていく。そんな感じだ。最悪の場合、歯を抜くことになる。

歯を抜かれたことがある患者さんの中には、「抜く必要がない歯を抜かれた」と言う人も多い。私も含め、歯科医師は必要がないのに歯を抜いたりはしない。自分の歯に勝るものはないからだ。

 ヒトはサメと違い、何度も歯が生えてくることはない。人工の歯を入れたとしても、元に戻ることはなく、見た目やかむ機能を修復したに過ぎない。

歯科医師は、患者さんが思う以上に、その人の歯を大切に考えている。できるだけ不自由なく、おいしく食べられるように。治療の中断や放置はしないでほしいのが本音だ。

歯に関心がなくても、いま一度、口の中のチェックをしてほしい。歯が健康な人は、年を取っても病気になりにくく、医療費も安くなる。

歯医者が嫌いなのはよく分かる。ただ問題は小さいうちに、早めに対処した方が、患者さん本人のためになる。何度も書くが、歯が自然に治癒することはなく、歯科医師がしていることはあくまでも修復だ。ご自身の歯に関心を持ち、大切にしてほしいと思う。(子飼歯科医院副院長)

◇おがた ひでのり 2003年、福岡歯科大卒。久留米市の聖マリア病院歯科口腔[くう]外科で研修後、福岡市や関西の歯科医院に勤務。12年から現職。趣味は釣り。ウナギは自分でさばく腕前で、昨年は20本以上釣り上げた。42歳。

最終更新:1/24(金) 12:23
熊本日日新聞

Measure
Measure

Tags