3Dプリンターで歯科矯正装置を作る


3Dプリンターで歯科矯正装置を作る

伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

 歯科矯正用の装置を手掛けるアソインターナショナルは、マウスピース型の矯正装置、いわゆる「アライナー」の製作工程の一部に3Dプリンターの活用を始める。この方法で製作したアライナーは、2018年4月1日に開始するデジタル歯科矯正向けサービス「AsoAligner DIGITAL(アソアライナーデジタル)」で歯科医院向けに提供する。

アソインターナショナル 代表取締役の阿曽敏正氏
[画像のクリックで拡大表示]

 アライナーは、金属や針金を使った矯正装置とは異なり、透明で目立たずに装着できることから、「歯科矯正治療率の向上に寄与する」(アソインターナショナル 代表取締役の阿曽敏正氏)と考えられている。同社はかねて、3Dプリンターを使わずに製作したアライナーを提供してきたが、受注件数は年々増加しており、2017年には6万件を上回ったという。

 しかし、アライナーの製作を担う歯科技工士の数は年々減少しており、同社としても人手不足が課題となっていた。そこで今回、歯科技工士が担っていた工程の一部を3Dプリンターに置き換えるサービスの開発に至った。

製作日数が半減

 一般的にアライナーの製作は、まず歯科医院で患者の歯型を取ることから始める。その後、現状の歯列を少し矯正した歯型模型を歯科技工士が製作し、これを土台としてアライナーを作る。

 今回のサービスでは、この工程のうち歯型模型の製作を3Dプリンターで行う。これによって、「歯科技工士の負担軽減や、歯型モデルの品質がばらつくといった問題を解消することが期待できる」と阿曽氏は話す。製作全体にかかる時間は従来の14日から7日に短縮でき、製作コストを3割カットすることが可能だと同氏は説明する。

製作途中の歯型模型
[画像のクリックで拡大表示]
3Dプリンター「Objet500 Dental Selection」
[画像のクリックで拡大表示]
ページ: 2

3Dプリンター、歯科で3つの活用法

 今回使用する3Dプリンターは、ストラタシス・ジャパンが提供する「Objet500 Dental Selection」である。同社の3Dプリンターは既に米国でアライナーの製作に活用されているが、「国内では初めての事例」とストラタシス・ジャパン 代表取締役社長の片山浩晶氏は語る。

ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長の片山浩晶氏
[画像のクリックで拡大表示]

 歯科領域における3Dプリンターの活用法は、大きく3つあると片山氏は見る。(1)差し歯や入れ歯の製作、(2)インプラント用のサージカル・ガイドの製作、そして今回の(3)歯科矯正用アライナーの製作、である。(3)の領域に着目した理由を、同氏は「諸外国に遅れをとっているが、産業として最も伸びが期待できる分野だ」と説明する。