歯ブラシもIoT デンタルテック続々


歯ブラシもIoT デンタルテック続々

スタートアップ企業が活躍するのはロボットや宇宙、金融といった分野だけではない。小型で低価格なセンサーの普及などで、歯科領域の「デンタルテック」企業も登場しつつある。歯周病などで歯科医院にかかる患者が増えている背景があり、商機を見いだす動きが広がり始めた。

小児歯科の悩み相談サービスを手掛けるノーブナイン(大阪市)は2020年、センサーで歯周病菌があるか調べる電動歯ブラシ「スマッシュ」を発売する。3ミリ角のセンサーに息をかけ、菌が発する「メチルメルカプタン」や硫化水素を検知する。無線経由で、スマートフォンアプリに日々のデータを蓄積できる。

歯ブラシもあらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器になるわけだ。歯科医師でもある竹山旭代表は「消費者が受診する動機になる上、歯科医への相談に生かせる」と話す。夏からの実験を経て、800の医院から発売する。1本5千~8千円の見込みで年8万本の販売を目指す。

センサー付き製品は今後増えるとされ、いち早く実用化する。開発には関西の町工場が協力している。

歯科分野では予約管理システムなど一部にIT(情報技術)が活用されてきたが、今後広がりをみせそうだ。コンピューター断層撮影装置の画像などの分析で先行して応用されているAIも、活用される時代がくる。

システム会社の歯っぴー(熊本市)は、スマホ写真から歯周病の可能性をみるAIを開発中だ。口の中の写真を撮り、歯石や歯肉の状態をみる。狙いは検診サービス会社への納入で、デンタルサポート(千葉市)が20年の導入を決めている。

18年に歯っぴーを設立した小山昭則社長は大手電機メーカーで画像処理などの技術開発に携わった。起業のきっかけについて「熊本地震の際、ボランティアで避難住民の歯を磨いて回るなかで思い立った」と語る。

厚生労働省によると、ある調査日の時点で継続的に歯科医院にかかっている患者の数は17年に推定134万人おり、02年から17%増えた。この需要の側面と、センサーの価格が下落したり分析技術が広がったりしている供給面の双方を背景にデンタルテックの市場が出現しつつある。

ITが解決するのは病気だけではない。例えば慢性的に不足する歯科衛生士の確保に生かせる。HANOWA(大阪市)は7月、専用画面で自宅近くの医院を探し、勤務時間を1時間単位で選べるサービスを始める。資格を持ちながら現場を離れたままの主婦らと歯科医院を仲介する。

マネーも集まるだろう。「歯科業界でも治療の高度化や効率化が急務」。歯科のスタートアップに投資するM&Dイノベーションズはこうみる。同社は三井物産が18年11月に設立した子会社だ。デジタルや素材の力を活用した「革新的な予防や治療につながる製品・サービスに需要がある」という。

(宮住達朗、佐藤史佳、横山龍太郎)

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