義歯設計のシケン、海外拠点生かし24時間体制
義歯設計のシケン、海外拠点生かし24時間体制 地域発世界へ
- 2018/6/24 17:50
- 情報元
- 日本経済新聞 電子版
入れ歯や差し歯など歯科技工物製造のシケン(徳島県小松島市)が海外市場の開拓に乗り出した。国ごとに医療に関する法規制や認証制度が異なるため、歯科技工物の海外展開は容易ではないとされてきた。シケンは日本市場で培ったコンピューターで義歯をデザインする手法を使い、海外拠点でデザインを請け負う事業に力を入れる。
シケンはフィリピン・セブ島で義歯をデザインする
フィリピンのリゾート地、セブ島。シケン子会社クエスト(愛知県半田市)の人工歯の製造拠点の一角に、コンピューター端末が並ぶ。フィリピン人の女性デザイナーが、米国から送られた患者の歯形データを基に、義歯のデザインをする。
米国とフィリピンの時差は約半日。米国の夜中の時間帯に作業ができ、コストだけではなく、納入が速いというメリットもある。
義歯は歯科医がとった患者の歯形をもとに、歯科技工士が経験的に製作する職人の領域とされてきた。シケンは経験が浅い技工士でもできるように、工程ごとに作業を分けて製作するシステムを構築。義歯のデザインはCAD(コンピューターによる設計)を採り入れ、コスト低下と品質確保を両立させた。
シケンが約3年前から取り組んでいるのが、口腔(こうくう)内を3Dスキャナーでデータ化した歯形を送ってもらい、その歯形に合う入れ歯や差し歯のデザインをして送り返す事業だ。そのデータを基に製作するのは発注した国の歯科技工士のため、国ごとの法規制に抵触する可能性が低くなり、海外から受注を受けやすいことに着目した。
シケンの島隆寛社長は、フィリピンと同様のデザイン拠点を世界の複数拠点で展開し、「時差を利用し24時間、義歯デザインを請け負える体制を構築する」との構想を掲げる。現地人材の歯科技工技術を高めるため、日本での研修制度も充実させている。
世界的に高齢化が進む中、先進国ではより審美性を高めた高度な義歯が求められる。新興国でも所得水準の向上に伴う義歯市場の拡大が見込まれる。シケンの2018年3月期のグループ売上高に占める海外比率はわずか1%。これを6年後の24年3月期には10%にまで高めるのが目標だ。
汎用品である人工歯の海外向け製品の開発も強化する。人工歯は原材料、色、硬さ、形状など国ごとに需要が大きく異なる。こうした多様な市場ニーズに対応するため、19年3月をめどに徳島本社の隣に「歯科材料研究開発所」を建設することを決めた。
人工歯製造を手掛けるクエストの開発部門の集約は次のステップに向けた一歩。島社長は「徳島から世界に売れるものを開発する」と意気込んでいる。
(徳島支局長 長谷川岳志)
会社概要 個人事業が大半の歯科技工を企業化しようと1979年に現社長の父、島文男氏が徳島県小松島市に、前身となる小松島歯研を設立。現在、徳島本社のほか東京、大阪などに計6カ所の技工所があり、400人強の歯科技工士を抱える。グループ売上高は約65億円。
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