化学工業日報
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東洋紡 歯科向け骨再生誘導材 今年度内に承認申請
東洋紡は東北大学と共同開発している骨再生誘導材「OCP/Collagen」について、今年度内にも歯科用医療機器として国内承認申請を目指す。歯周疾患や腫瘍摘出などで生じた顎の骨の欠損治療に用いる医療機器で、従来の歯科用人工骨と比べて優れた骨再生能力を持つほか、再生した骨は既存の骨と同等の結晶構造や硬さなどを有している。東洋紡としては2018年度後半にも上市を計画している。
【写真説明】優れた骨再生能力を持ち費用対効果が高い

新光商事 鳥獣被害対策用センサー提案 自治体と連携図る
新光商事は鳥獣被害対策の省力化、省人化に貢献するくくり罠センサーを開発した。低電力・長距離無線通信規格「LoRaWAN」を採用した自社製造の通信モジュールを活用。くくり罠のIoT(モノのインターネット)化を図ることで、罠にかかった動物を見回る猟友会会員の負担を軽減できる。長野県伊那市では自治体と同社を含む企業、団体が連携し、2018年から同センサーを使用したシステムの運用を開始することが決定した。新光商事は今後、他の自治体への提案も検討していく。
大和化成 タイ進出 バンコクに販社設立
【バンコク=岩崎淳一】大和化成は、タイで生産進出を視野に事業を拡大する。このほど、海外初の販売拠点をバンコクに設立した。世界シェアの高い電子部品向け表面処理薬品、グラビア印刷シリンダー用メッキ向け薬品、防錆剤を中心に現地での販路拡大を目指す。ITC(国際貿易センター)のライセンスも申請中で、登録後は三国間貿易にも乗り出す考え。タイを海外事業の中核拠点とし、将来的に主力製品の生産を検討する。
日立造船 杜仲エラストマー拡大 化粧品原料や運動用品
日立造船が、杜仲の種子由来のバイオマス素材「トチュウエラストマー」の用途展開を加速している。一丸ファルコス(岐阜県)と共同で化粧品原料を、松本歯科大学(長野県)とはスポーツ用マウスガードを開発した。トチュウエラストマーは耐衝撃性や人体に優しいといった特徴を持ち、幅広い分野での応用が見込まれる。これまでに3Dプリンター用フィラメント素材などを開発してきた。原料となる杜仲の栽培から材料生産までを手掛ける安定供給力も活かしながら、「新たな柱となる事業の創出」(日立造船)に向け早期の本格事業化を目指す。
【写真説明】一丸ファルコスと開発した化粧品原料(上)。松本歯科大学とはスポーツ用マウスガードを開発した

海洋天然物化学の先頭を走りたい
1970年代から80年代にかけてのテレビ番組『驚異の世界・ノンフィクションアワー』で放送された『クストーの海底世界』シリーズ。フランスの海洋学者ジャック=イヴ・クストーが自ら制作・出演した海洋ドキュメンタリーだった。彼は潜水用の呼吸装置「アクアラング」の発明者の一人としても知られる▼このアクアラングがもたらしたものは驚くべき海中世界の映像だけではない。これにより研究者も手軽に海に潜れるようになり、海洋天然物化学の発展に拍車をかけたとされている▼海洋には30門50万種を超えるともいわれる生物が生息。生命や種を維持するために様々な化合物を代謝し生産している。これをもとにして化学合成されたり抽出されたりした農薬や医薬が実用化されている。海綿動物から単離されたハリコンドリンBの合成誘導体である抗がん剤のエリブリンが話題を集めた記憶はいまも鮮明だ▼エリブリンは、64工程の化学反応で合成される。64という数字は驚異というだけでは済まないものすごい数字である。このプロセス開発の苦闘は『企業研究者たちの感動の瞬間―ものづくりに賭けるケミストの夢と情熱』(有機合成化学協会+日本プロセス化学会編)に詳しい▼広大な海洋に囲まれている日本。海洋天然物化学の先頭グループを走りたい。(17・10・4)
漁業の成長産業化へ養殖業の革新を
政府の規制改革推進会議が、漁業の成長産業化へ向け具体的な検討を開始した。日本食ブームに乗って、輸出拡大を期待したい。水産資源に余力はなく漁獲量の増加は難しいなか、とくに養殖業の発展にこそ、日本の漁業の未来があるのではないだろうか。
水産白書によると、世界の1人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約2倍に増加した。その間も世界の人口は増え続けているため、全体の消費量は約5倍にも膨らんでいる。その一方、漁獲量をみると20年ほど前から横ばいだ。国連食糧農業機関(FAO)の調査では、漁獲量を増やす余地がある水産資源は全体の1割ほどにまで縮小したとされ、6割は拡大の余地がない。そして残りの3割は、乱獲によって持続可能性が危ぶまれている。
こうしたなか需要の増大を支えてきたのが養殖である。その生産量は過去20年の間に世界で3倍以上に拡大し、2013年に、ついに漁獲量を上回った。今後の世界の水産物需要を支えていくのは、主に養殖業だと考えられている。
ただ先行きの見通しは必ずしも良好ではない。FAOでは今後、良質な水が得られるか、養殖に適した土地・場所適地があるか、十分な量・質の養殖用種苗と餌料が入手できるか―といった制限要因を挙げ、世界の生産量拡大ペースは、これまでより落ちると予測している。
日本の養殖業をみると、ウナギはほぼ100%、マダイは約80%、ブリ類は過半が養殖ものとなっている。養殖は漁に比べてコストがかかるため、値の張る魚に限られているのが現状。生産量全体からみると養殖の占める割合は2割にとどまっている。
養殖のコストの大部分を占めるのは餌代。これを抑えられれば養殖の裾野も広がる。養魚飼料の原料には通常、魚粉が使われてきたが、生産量の減少から価格が上昇している。このため大豆油かすや肉粉の利用が進んでいるが、完全な代替は難しく欧米を中心に微細藻類、昆虫、単細胞たんぱく質などを使った取り組みが始まっている。
さらに、これからは魚についても育種を進めることが重要となってくる。農作物や家畜での品種改良は当たり前だが、水産物では養殖において育種されたものは限られている。今年改定された国の水産基本計画では、耐病性や高成長、幅広い水温への耐性など、望ましい形質を持つ優良品種を得るために研究を推進することが掲げられた。技術力によって養殖業に革新をもたらし、漁業の成長産業化を実現してほしい。
旭硝子 省エネ型遮断ガラス トヨタと共同開発
旭硝子は、トヨタ自動車と省エネ性に優れたショールーム用ガラス構造システムを共同で開発する。旭硝子の遮熱性ガラスを採用、軽量でフレシキブルに開閉できるなどの特徴も持つ。自動車販売会社のショールームやオフィスビルなどを対象に2018年春からの発売を目指す。
三菱ケミカル エポキシで透明フィルム ディスプレイなど有望
三菱ケミカルは、特殊なエポキシ樹脂を用いて高透明のフィルムを開発した。自在に折り曲げられ、伸び縮みする機能も付与できるほか、フィルム表面に銀や導電性ポリマーなどで配線パターンを描ける。フレキシブル有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイやウエアラブルデバイスの基板材料などの用途を想定。最終製品、フィルムメーカーなどと連携し、2、3年内の実用化を目指す。
ナフサ アジア市況 半年ぶり500ドル台に乗せ
ナフサのアジア市況が上昇してきた。6月下旬に1トン当たり400ドル以下に沈んだが、原油相場の回復、域内石化企業の定修明け、液化石油ガス(LPG)の高値安定、欧米の製油所の供給トラブルなどを材料に先月に半年ぶりに500ドル台に乗せ、上値を追う展開となった。
ジャパンコンポジット カーボンSMC ラージトウ対応設備導入
ジャパンコンポジットは、自動車の軽量化ニーズに対応するためシートモールディングコンパウンド(SMC)設備にラージトウタイプの炭素繊維を用いるための付帯設備を導入した。以前から試作を始めていたが、新たに開繊および分繊設備を設置して、ラージトウでも均一分散性を高めた。自動車向け炭素繊維部材では相対的に低コストで提案できるSMCに注目が集まっている。ラージトウを用いても高品位化できることを提案して採用につなげていく。
ImPACT研究グループ ゲノム増幅 新技術開発
内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)に参画する研究グループは、ゲノムが増える仕組みを試験管内で再現し、巨大なDNAを増幅する技術の開発に成功した。大腸菌を宿主に遺伝子組み換え操作するしかなかった従来方法とはまったく異なる方法で、無細胞の状態で20万塩基対(遺伝子200個程度)を超える巨大な長鎖環状DNAをわずか3時間で100億倍以上に増幅できる。有用物質の革新的生産技術基盤とみられている次世代型遺伝子工学ツールとして、人工細胞による「人工ゲノム合成法」の開発につながる成果。
AIRM 他家由来の多能性幹細胞医療 世界最速の事業化ねらう
アステラス製薬の細胞医薬事業化拠点であるAIRM(アステラス インスティチュート フォー リジェネラティブ メディスン)は、他家由来の多能性幹細胞(PSC)を用いた細胞医療の世界最速での事業化を目指す。網膜色素上皮細胞(RPE)を用いた黄斑変性(AMD)など適応の第1/2相臨床試験(P1/2)では、今年前半に新開発のPREに切り替えて米食品医薬品局(FDA)に治験申請し、欧米で新治験を開始した。これまでのP2で良好なデータを得ており、新たな治験データを用いFDAと協議しながら申請に持ち込む。また血球芽細胞由来MSC(HMC)、血管前駆細胞など眼科以外も治験への準備を進めている。
エヌアイケミカル 千葉で1000キロリットルタンク増強
エヌアイケミカルは、千葉でタンク貯蔵能力を増強する。タンクターミル拠点である本社・千葉事業所(千葉市美浜区)で1000キロリットルタンク2基を新たに建設する計画で、今年12月に着工し、2018年末の運用開始を目指す。これによって同事業所における総貯蔵能力は約3万5400キロリットル体制に拡大する。50―100キロリットルの小型タンク新設も検討しており、需要動向を見極めながら建設計画を具体化する考え。タイト基調が続くタンク需要や多様化するニーズに対応するほか、とくに貯蔵能力が不足している東京湾岸エリアでの体制強化を図る。
プリント基板用薬品 日系メーカー タイで攻勢
【バンコク=岩崎淳一】日系プリント基板・電子部品製造用薬品メーカーがタイで投資を活発化している。メックが2018年夏に工場を新設して進出するほか、菱江化学は設備増設を決定し18年初めにも生産体制を強化する。大手日系プリント基板メーカーがスマートフォン向けや車載向けなどに生産を拡大していることが背景にある。電子基板は自動車のエレクトロニクス化にともない成長が見込まれ、その製造工程で用いられる薬品需要も伸長が期待できる。
住友金属鉱山 加賀電子子会社を取得 SiC基板の低コスト量産検討
住友金属鉱山は3日、加賀電子との間で、加賀電子の子会社で炭化ケイ素(SiC)基板開発を手がけるサイコックスの株式51%を取得し、SiC基板開発における合弁契約を締結したと発表した。株式譲渡の実行および合弁の開始は30日を予定。
東レ 高機能フィルム増産 最先端の成長市場に特化
東レは工業用フィルム事業で高品位や薄膜といった付加価値品の生産を増やす。ドライフィルムフォトレジスト(DFR)用途は電子回路の高精細化に対応し、国内拠点の手直し増強や汎用品との入れ替えによって高性能品を増産。フィルムコンデンサー用途は中国拠点に特殊蒸着ラインを追加し、電気自動車(EV)などの小型コンデンサー市場を狙う。磁気テープではハイエンド向けのパラ系アラミドフィルムの生産能力を約2倍に拡大する。最先端の成長市場に特化し、差別化戦略を推し進める。
粉研パウテックス 1台で粉体を高精度分配
化学プラント向け粉体機器メーカーの粉研パウテックス(東京都品川区)は、連続定量供給機(フィーダー)の新製品を開発した。1台のフィーダーで最大4口の排出ゲートを設置し、高精度な分配供給ができる。従来は4台のフィーダーが必要だった。新製品は1台に集約でき、効率生産や電力コスト削減に役立ち、初号機が化学会社の製造プロセス用として正式採用された。同社は顧客ニーズにきめ細かく対応し、ソリューションビジネスとして展開する。
シャープ FFD 統合インパネ提案
シャープは、異形・湾曲形状が可能な液晶ディスプレイ「フリーフォームディスプレイ(FFD)」で車載市場の開拓を強化する。新たに2つのディスプレイを連結し、インパネ部分にすっぽり納められる「車載統合インパネ」を開発した。メーターや地図、天候など運転にかかわる情報を連結されたFFDに同時に表示できる。IGZO(インジウム・ガリウム・亜鉛からなる酸化物半導体)による滑らかな映像も強み。音声入力インターフェースとの併用も検討する。2020年度の投入を予定している。
【写真説明】FFDによる車載統合インパネと音声入力インターフェース

T&K TOKA 水性フレキソインキ 油性グラビア並み高品質
T&K TOKAは、軟包装向けに水性フレキソインキを拡販する。フィルムの裏刷り用グレードで、インキ濃度を従来の2倍に高めたことにより油性グラビアインキと遜色ない品質を実現する。出版物などのオフセット印刷を主に手がけるコンバーターは、成長分野の軟包装市場に参入するにあたり、印刷技術が向上し環境負荷を減らせる水性フレキソを選択するケースが増えている。同社は印刷効率の改良を図るとともに、表刷り用グレードの開発も視野に入れる。
【写真説明】インキ濃度を2倍近くに高めることに成功し高い印刷品質を実現

インド農薬産業 輸出に期待 内需伸び悩み
インドで6月に始まったモンスーン期が明けた。インド気象庁は先月末、今年度の降雨量は平年に比べ5%少ないとの見通しを示した。平年並みと呼ぶには若干少なく、主要農産物の収穫量も前年を下回ると予想されている。農薬は高い成長性が見込まれるものの悪天候から需要伸び悩みが続いており、インドの農薬産業では、輸出の高い成長を期待している。
インビスタ ADN新製法 欧米や中国で導入
インビスタは、ポリアミド(PA)66樹脂事業の競争力向上に乗り出す。このためテキサス州オレンジのプラントで用いるブタジエンベースのアジポニトリル(ADN)の製法を欧米の既存プラントに導入するほか、中国で計画している新プラントでも活用する。中国では合弁で大型プラントを建設する可能性が浮上しており、具体化すれば2016年に稼働を始めたヘキサメチレンジアミン(HMD)とPA66樹脂の生産基盤の強化につながる。
医薬品を次の柱に 大阪ソーダの挑戦 (上)
大阪ソーダが医薬品関連ビジネスの拡大に向け、矢継ぎ早に積極策を講じている。医薬品原薬・中間体事業は相次ぐ設備投資により受託製造の範囲を拡大。液体クロマトグラフィー用シリカゲルを扱う医薬品精製材料事業は、資生堂のクロマトグラフィー事業の買収を決めた。医薬品関連ビジネスを中心とするヘルスケア部門の売上高は現状約60億円で、「2020年度には売上高100億円以上を確実なものにする」(赤松伸一取締役常務執行役員兼サンヨーファイン社長)。次のM&A(合併・買収)の機会をうかがうなど今後も攻勢をかけていく。(池田旭郎)