【ブラックジャックを探せ】“食べること”に全力で取り組む! 訪問診療で嚥下機能改善、東京医科歯科大学歯学部附属病院摂食嚥下リハビリテーション外来、准教授・戸原玄さん
★東京医科歯科大学歯学部附属病院摂食嚥下リハビリテーション外来 准教授・戸原玄さん(45)
大学病院に勤務していながら、実際には大学病院にはほとんどいない、不思議な歯科医師がいる。
東京医科歯科大学歯学部附属病院摂食嚥下(えんげ)リハビリテーション科の戸原玄准教授は、日中は電車で都内を走り回り、自宅や高齢者施設で療養中の患者の訪問診療に従事している。といっても、一般的な歯科診療を行うのではなく、嚥下、つまり「飲み込み」の機能改善に特化した診療を担当する。
「脳卒中などで急性期やリハビリ病院での治療を終えたあとも、嚥下障害が残るケースは少なくない。きちんとリハビリをすれば回復する可能性があるのに、患者さんや医療者も含めて“治らないもの"と思い込んでいることが多くあります。もちろん加齢に伴う嚥下機能の低下にも対応します」
そう訴える戸原准教授の医療圏は、大学病院から半径16キロ以内。つまり、23区内のほとんどをカバーすることになる。
「傍から見ると大変そうに思われがちで、“在宅"という医療環境には相応の制限があるのも事実ですが、しっかり診察をして多職種と共有できていれば難しいというものではない」
夕方、大学に戻ると、その日、診察した患者の、それぞれの地域で在宅診療を担当している主治医らとメールで情報を共有する。これにより「全身状態を管理する中での嚥下機能の回復」を検討していくのだ。
「この領域は、歯科でも医科でも誰が診てもいい。ただ“食べること"への全力での取り組みが不可欠。片手間ではできない仕事なんです」
超高齢化の進展を背景に、今後確実にニーズの高まる領域。その最前線に立つ戸原准教授の言葉は重い。(長田昭二)
■戸原玄(とはら・はるか) 1972年、青森県生まれ。97年、東京医科歯科大学歯学部卒業。99年、藤田保健衛生大学医学部研究生。2001年、米・ジョンズホプキンス大学留学。03年に帰国後は東京医科歯科大学歯学部附属病院高齢者歯科助教、摂食リハビリテーション外来医長などを経て、08年、日本大学歯学部摂食機能療法学講座准教授。13年より東京医科歯科大学大学院准教授。趣味は子供と遊ぶこと。
