歯垢染色剤の使用に関する見解
日本口腔衛生学会 2,018年3月
歯垢染色剤の使用に関する見解日本口腔衛生学会2018年3月2017年4月27日日本学校歯科医会の丸山進一郎会長(当時)より歯垢染色剤によるアナフィラキシーの症例が報告されているとのことで、日本口腔衛生学会に対応に関する検討を求められた。
また、同時に日本口腔衛生学会の会員からもこの件に関する問い合わせが複数あったので、フッ化物応用委員会として独自の調査を行うとともに、歯垢染色剤の使用に関する検討を行ってきた。その結果を下記に示す。
1.学齢期未満の乳幼児への使用に関しては、慎重な使用が望まれる。使用する場合は、保護者へ子供のアレルギー様症状の経験が無いことを確認してから応用する。
2.学齢期以降の小児および成人の場合は、アレルギーの既往等を考慮して使用する。
なお、現段階では歯垢染色剤とアナフィラキシーとの間には明確な因果関係が科学的に立証されていないことから、今後新たな科学的情報が得られた時点で本見解は見直しが必要である。
この見解に至る経過これまで報告された歯垢染色剤(溶液)によるアナフィラキシーショックの症例は2例で、いずれも発症年齢が3歳であり、そのうち一人はアナフィラキシーショックの既往があったケースである。アナフィラキシーショックについては、『知っておきたいアナフィラキシーの正しい知識』(広島県医師会HP)に「一般に食物アレルギーは乳幼児で発症することが多く、その後、年齢とともに減少していきます」という記載があり、日本小児アレルギー学会の『食物アレルギー診療ガイドライン』にも、「我が国の即時型食物アレルギー患者は0歳をピークに加齢とともに漸減し、その多くは乳幼児期に発症する」と記載されている。
したがって、学齢期未満の乳幼児への使用に関しては、歯垢染色剤のようなアナフィラキシーショックを引き起こす可能性のある製品の使用は、可及的避けることが望まれる。
使用する場合は、必ず保護者へ子供のアレルギー様症状の経験が無いことを確認してから応用すべきであろう。
ただし、アナフィラキシーショックまたはアレルギー様症状を起こす原因物質に関しては、これまでの研究報告でも明らかにされていない。
一方、歯垢染色剤のメーカー(2社)に対する身体被害の申し出調査では、過去10年間でそれぞれ20件前後であったが、中には「色が落ちない」などのアレルギー様症状以外のものもあった。申し出た者の年代的な内訳は、幼児および学齢期の小児が半数以上で、成人は2割程度であった。
また、身体被害の申し出件数に関して、錠剤と液剤の違いは特に認められなかった。
アナフィラキシー様ショック症状の申し出は、2014年と2015年の上記2件のみでいずれも対象は3歳児であった。
学齢期の小児の場合は、個別または集団のいずれの場合も、事前に保護者へアレルギー様症状の経験の有無を確認してからの応用が望まれる。
また、成人への応用に関しては、アレルギー様症状の既往等を考慮して使用することが望ましい。Download PDF