損保ジャパン、歯科機器保証サービス 修理費負担軽減: 日本経済新聞


損保ジャパン、歯科機器保証サービス 修理費負担軽減

2021年7月14日 20:00 [有料会員限定]

損害保険ジャパンは歯科医療機器の保証サービスを始める。通常は1年の品質保証期間を、機器メーカーが保証料を支払うと5年前後に延長し、機器の修理費を損保ジャパンが負担して歯科医院は支払わないで済むようにする。医院などはより安心して使えるようになり、メーカーも機器を売り込みやすくなる。3年間で全国40社との契約を目指す。

保証サービスを企画した同社八幡支社(北九州市)によると、国内には外資系を含め約200社の歯科機器メーカーがあり、メーカー保証期間は大半が1年だという。購入した機器に不具合が起きた場合、保証期間後の修理費は原則、歯科医院の負担になる。

最近は機器の高額化に伴い、1回の修理費が50万円以上かかることも珍しくなく、医院の経営圧迫の一因になっている。損保ジャパンは機器の価格の数~10%を1台売れるごとに保証料としてメーカーから受け取る。その代わり、機器に不具合が起きて修理した場合の実費を、損保ジャパンがメーカーに支払う。保証期間は契約に応じて変動するが、5年前後を見込む。期間中、歯科医院は修理費を支払わなくてすむ。

保証対象には、患者の歯を削ったり唾液を吸引したりする装置と治療台がセットになったユニットチェア、口腔や歯を調べるX線撮影装置、差し歯や入れ歯を患者に合うよう加工するCAD・CAM(コンピューターによる設計・製造)装置などを想定する。家電業界でも保険会社がメーカーと契約し、保証期間を延長している場合がある。歯科機器メーカーや販売代理店が他社より長い保証期間を付けることで、歯科医院に売り込みやすくする。

新サービスは本来医院側が負担する修理費用をメーカーに振り替え、メーカーの負担が増すようにもみえる。八幡支社の上妻憲幸支社長は「メーカー側にも利点がある」と強調する。歯科医療機器は高額なこともあり1年の品質保証期間中はもちろん、期間が終了してもしばらくの間は故障しても、メーカーが修理費用を医院に請求できないケースもあるという。

上妻氏によるとこうしたケースに備え、毎年一定額の引当金を積んでいるメーカーが少なくない。新サービスを利用すれば引当金を積む必要がなくなる。引当金がなくなることで、なるべく身軽な資産で事業を営む最近の経営トレンドにもあうとみる。

上妻氏は「歯科機器を対象にした延長保証制度は国内初」と説明する。約200社ある機器メーカーのうち、2割の企業と3年以内に契約し、年間数億円の売上高を目指す。

新サービス開発の背景には、損保ジャパンの経営改革もある。2021年春に本部制度を廃止し、本社と地方支社の距離が縮まった。現場で知った課題を解決する新サービスを支社が企画し、本社の承認を得て全国展開しやすい環境になったという。

(山田健一)