【売れないモノを売る極意】AI時代を生き抜く「職人の技」 難関資格には活躍の場あり
【売れないモノを売る極意】AI時代を生き抜く「職人の技」 難関資格には活躍の場あり (1/2ページ)
近い将来、AI(人工知能)が多くの仕事を奪うと言われています。難関とされる資格もAIに仕事を奪われて無駄になるかも、なんていう話もささやかれています。しかし、本当に無駄になってしまうのでしょうか?
そこで、10年ほど前から、コンピューターやインターネットが普及した影響で仕事が減り始めているという歯科技工士のエピソードをご紹介したいと思います。歯科技工士といえば、かなり勉強しないと取得できない国家資格で、入れ歯を作る専門家として全国で活躍されています。ところが10年ほど前、海外の企業がインターネットを活用して入れ歯を作るサービスを始めたことで、仕事が減ったというのです。
なんでも歯医者さんが患者の歯のレントゲン写真を撮影してインターネット送信するだけで入れ歯を作ってしまうサービスらしく、人件費がかからない分、価格が格段に安くできてしまうのだそうです。もちろん、それだけで歯科技工士の仕事が無くなることはありませんが、見切りをつけて離職する人は増える一方だといいます。
そんな中、歯科技工士ならではの手先の器用さで入れ歯以外のものを作ってみたら売れたという人たちに出会いました。たとえば岡山のSさんは大好きなタイガーマスクの覆面を作ったら、プロレスファンにクチコミで広がり2万~4万円で売れるようになりました。
ご本人は「あくまで趣味です」と言い切られますが、完成した覆面は趣味にしておくのはもったいない出来栄えです。
また岐阜のTさんは、独特の手先の器用さを生かしてジュエリーを作ったら、これまたクチコミで評判になり売れたそうです。こちらも、びっくりするほど見事な出来栄えです。
つまり歯科技工士の皆さんは精巧な入れ歯を作るほど器用な手先をもっておられるワケで、それを生かせば、誰もが驚くほどの覆面やジュエリーができてしまうのです。本気になったら、もっとスゴイものが作れるに違いありません。
そういえば1年ほど前、眼鏡フレームの生産で有名な福井県鯖江市を訪ねた時、「職人を育てたいのに若者が都心へ出て困る」という悩みを訊きました。高級なフレームほど機械やコンピューターではできない職人技が必要になるそうです。しかし若者にこだわらなくても手先の器用な歯科技工士さんに声をかけたら、即戦力になるのではないでしょうか。他にも、器用な手先を必要とする仕事は全国にたくさんあるはずです。
これからAIが普及しても、国家資格を取れるほどの能力や技術には活躍の場があるということでしょう。必要なのは思い込みやこだわりを捨てること。取得したのは資格というより、人間にしかできない技なのですから。
■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを2500件以上成功させた“ブーム仕掛け人"。
