シケン、歯科技工物と人工歯のR&Dを徳島に集約

 入れ歯など歯科技工物の製造を手掛けるシケン(徳島県小松島市)は研究開発部門を徳島本社に集約する。2019年3月をめどに本社に隣接した場所に歯科材料を主体とした研究棟を建設し、人工歯製造を手掛ける子会社クエスト(愛知県半田市)の開発部門を移管させる。歯科技工物や人工歯の材料の研究開発体制を充実させ、海外市場を含む多様化する市場ニーズに対応する狙いだ。
シケンは歯科技工物と人工歯のR&D部門を徳島に集約し、開発体制を強化する。(写真は島隆寛社長)
シケンは徳島県小松島市の本社横に歯科技工物と人工歯の研究開発棟を新たに建設する
 新たに徳島県小松島市に建設する「歯科材料研究開発所」は、延べ床面積600平方メートルを予定。設備関連を含めて投資額は2億円程度を見込んでいる。クエストの人工歯の設計開発や品質システム管理を担当する研究開発部門を全面的に移し、シケンの開発部門と一体で運用する考えだ。
 同時にクエストの海外事業を含む営業推進課など営業部門も徳島に移転させる。異動対象は合計で15人程度になる。物流関連の部門は愛知県半田市に残す。シケンの島隆寛社長は「徳島本社へクエストのR&D(研究開発)部門を集約することで相乗効果が高まる」と期待している。
 新たなR&D拠点では、歯並びや歯の色を整えるといった審美歯科の需要拡大などをにらみ、クエストが手掛ける人工歯やシケンの歯科技工物で、新たな素材の開発を進めるほか、より精密な加工技術なども研究する。
 シケンでは今後、採用が難しくなると予想される歯科技工士の確保に向けて、19年1月をめどに同社として九州で初となる技工所を熊本県に設置する。投資額は約2億円となる見込み。歯科技工士は全国に約3万5000人いるが、2割以上が60歳以上と高齢化が進んでいる。一方で養成学校の卒業生は年間1000人を下回っており、ピーク時の3分の1以下だ。
 シケンは現在、徳島本社のほか、徳島県板野町や東京、大阪などに計6カ所の技工所があり、400人強の歯科技工士を抱えている。この数年、熊本市にある歯科技工士の専門学校から定期的に新卒採用をしており、安定的に人材を確保する目的で、熊本県への進出を決めた。熊本県の技工所では入れ歯の製作ラインを徳島本社から一部移す計画だ。
 ▼歯科技工物 虫歯などで欠けたり抜けてしまったりした歯を補うため、歯科医師からの依頼を受けて歯科技工士が作製する「入れ歯」「差し歯」「クラウン(かぶせもの)」「矯正装置」など。素材は金属やセラミック、プラスチックなど多岐にわたる。
 国内で作製できるのは国家資格を持った歯科技工士に限定されている。美しい口元をつくる審美歯科の需要拡大もあり、歯科技工物の市場は広がっている。ただ、歯科技工士を志望する人は減少傾向で、専門学校など養成機関も減っている。
(長谷川岳志)