【現場写真入手】五輪組織委の医療物資廃棄 スタッフの告発「譲渡を提案したのに…」 | 週刊文春 電子版


【現場写真入手】五輪組織委の医療物資廃棄 スタッフの告発「譲渡を提案したのに…」

TOKYO 2020 未使用医療物資は語る

「週刊文春」編集部
2021/08/31

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大量に廃棄された医療物資

 8月31日に東京五輪・パラリンピック組織委員会が発表した、未使用の医療物資の廃棄問題。実は「週刊文春」はこれに先駆けて現場写真を入手しており、8月30日にスタッフの証言をもとに組織委員会に事実関係を確認する取材を行っていたが、期限までに回答はなかった。

 ところが、翌31日になって山下聡・大会運営局長が突如「会場撤収の過程で判明した」と発表。組織委員会によると、廃棄が行われたのは9会場。マスク3万3000枚、消毒液380本、ガウン3420枚を廃棄し、金額はトータルで500万円に上るという。山下氏は「あってはならないこと。謝罪申し上げます。組織委員会として大変申し訳ないことをした。再発防止に努めていく」と謝罪した。

 だが、小誌に告発した医療スタッフによると、この廃棄は意図的だったという。一体、何があったのか。写真とともに以下で詳報する。

◇◇◇

「未使用の医療物資を大量に廃棄するなんて、信じられないです。〝五輪の医療現場の裏側〟を多くの人に知ってほしいです」

 そう憤るのは、東京五輪・パラリンピックの大会スタッフ。各競技が盛り上がる中、その舞台袖で何が起こっていたのか――。

 とある五輪大会会場。競技日程が全て終わり撤収作業に入ると、医療スタッフにある〝通達〟が出されたという。

「救護室にある未開封の医療物資をすべて廃棄するよう言い渡されました。直属の上司に理由を聞いても『民間に譲渡できないと規約で決まっているから』の一点張り。規約の中身はパソコン上でロックされており、大会の責任者クラスにならないと閲覧できず確認できません。未使用のマスク、ガウンは今、医療機関で必要としているところもあるはずなのに、譲渡できませんでした」(同前)

 当初、五輪は観客を入れて実施される予定だったため選手とスタッフ、ゲスト分の医療物資を発注。しかし、開会十五日前無観客が決定し、キャンセルできなかった観客分が大量に余ってしまったのだ。別の大会スタッフが、担当会場の医療物資廃棄について詳細な説明をしてくれた。

サージカルガウン

 「サージカルガウン二百枚、サージカルマスクやN95マスクがそれぞれ千枚以上です。大会のためにサイズを特注したリネン製タオルも数えきれないくらい捨てました。点滴の針など危険物は『REPAIL』と書かれた専用容器に入れます。廃棄するものは最終的にミニバン四台ほどで運ばれていきました」

サージカルマスク

 余った医療物資を自治体や医療機関に格安で譲るといったスタッフからの提案もある。しかし、予算や人員不足を理由に運営側からは却下され続けている。

危険物を入れる専用バケツ

「パラリンピックが終わって完全撤収となれば、余った医薬品を大量に廃棄することになるでしょう。中には無断で、知り合いの病院に寄付するスタッフもいるようです。しかし、もしそれがバレれば彼らは『規約違反』となり、責めを負うことになるかもしれません」(同前)

 これらの問題について組織委員会に尋ねたところ、期日までに回答がなかった。

 今この時も、苦渋の決断を強いられる現場の人がいる。

source : 週刊文春 2021年9月9日号

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