歯科にアナログ営業徹底 東和ハイシステム、密着サポート


歯科にアナログ営業徹底 東和ハイシステム、密着サポート 中四国 企業・事業所going

 歯科医向けに特化した統合電子カルテシステムを展開する東和ハイシステム(岡山市)は、日立製作所のIT(情報技術)技術を取り込み、信頼性を高めたシステムを提供して事業を拡大させている。「買ってもらってから営業が始まる」と例える密着体制を武器に西日本でトップシェアを誇る同社は東京に支社を開設。首都圏を皮切りに東日本の開拓も始めた。

CLTパネル工法によるセミナーハウス(岡山市)

システムはタブレット端末にも対応

 「人生もロマン、経営もロマン。無限の可能性に挑戦しよう」。石井滋久会長は1月4日、岡山市内のホテルで開いた創業40周年のお祝いを兼ねた新年の集いで、今春入社予定の学生を含めた社員に改めて呼びかけた。

 西日本の営業エリアに約2万あるといわれる歯科診療所。規模は様々なので、同社によると、統合電子カルテシステムの対象となるのはおよそ6割。そのうち約3000を顧客としている。

■アイパッド連動

 日立特約店である同社の特徴はソフト開発だけでなく、販売からサポートまで一貫して提供する体制にある。受診予約からカルテ入力、診療報酬明細書(レセプト)の作成まで一元管理できる電子カルテシステム「ハイデンタルスピリット」は日立のデータベースソフトを基に独自に開発。指静脈生体認証システムも導入、情報漏洩も防ぐ。

 さらに問診、検査、分析など8分野で、米アップル社のタブレット端末「iPad(アイパッド)」と連動させた。受付管理や会計とも連動し、院内業務の効率化をサポートする。

 そのシステムを社員が歯科医に直販する。信条は「サポートなくして販売なし」(石井会長)。代理店販売や販売後のサポートはコールセンター対応が多いなか、同社では直販に加えサポートも社員が対応する。顔の見える関係を築くのだ。

 「究極のアナログ戦術ですよ」と石井会長は笑う。保険料改定時にCD―ROMを1枚送ってシステム更新をやらせるような会社に、「病院関係者が現場の悩みを打ち明けるわけがない」。そして、現場の声は新たなビジネスにつながる。

 それだけに社員教育には力を注ぐ。歯科医療についてはもちろん、保険やシステムについても高度な知識を習得する必要がある。そのためのセミナーハウスを昨年、本社近くに完成させた。国内初となる新建材、CLT(直交集成板)パネル工法により、火が広がりにくい1時間準耐火構造の3階建ての建物だ。

 「当初は鉄骨造で設計済みだったが、会長がCLTを知り、変更した」。設計を担当した片山建築研究所(岡山市)の片山茂樹代表は明かす。欧米では高層建築にも使われるCLT。期待の新建材だ。杉材の香るセミナーハウスで、新入社員は2カ月半缶詰めになり、知識や理念を学ぶ。

■東日本も開拓へ

 創業は1978年3月。東和レジスターに66年に入社した石井会長が、営業所ののれん分けで、出身地の広島を譲り岡山を得た。うどん屋チェーン向けの業務管理ソフトなど、様々なパッケージソフトを手掛けるうちに出合ったのが歯科向けのシステム。「内科医などに比べ歯科医の業務ははるかに複雑」(石井会長)。しかもニッチ市場なので、大手の参入はないと踏んだ。それが当たり87年に社名変更、現在に至っている。

 大阪から沖縄まで西日本全域に19カ所の拠点を置き、サポート体制を敷いてきた。密着の裏返しで、営業エリアの拡大は簡単ではないが、16年8月に東京支社を開設。東日本の開拓に乗り出した。ここ数年は新入社員約20名の採用が続き、陣容は急拡大しており、売上高の上積みを目指す。

 首都圏では既に17の顧客をつかんだ。営業もITによる効率化・生産性向上が幅を利かす時代だが、アナログ営業の旗を掲げ新市場に挑む。(岡山支局長 上野正芳)