虫歯が多いのはなぜ? 虫歯が多くならないようにするには - Ameba News [アメーバニュース]
虫歯が多いのはなぜ? 虫歯が多くならないようにするには
虫歯で悩んで放置したままの人もいれば、生まれてから一度も虫歯ができたことがないという人もいます。彼らの違いはいったいどこにあるのでしょうか。虫歯の原因と虫歯が多くなってしまう理由、虫歯が多い人はどのように対処していけばいいのか、そして最後には歯医者さんにも虫歯が多い人はいるのかという謎について歯の専門家に聞いてみました。
虫歯が出来るのはなぜ?
虫歯が出来る原因は、細菌にあります。
細菌とは、ストレプトコッカス・ミュータンス、いわゆる虫歯菌が代表的ですが、それ以外にもラクトバチルス菌とよばれる乳酸菌も虫歯の原因菌にあげられます。
虫歯菌が虫歯を作るメカニズム
虫歯菌が、お口の中に残った食べカスなどを利用して、乳酸を生み出します。歯の表面はエナメル質とよばれる非常に硬い物質で出来ており、この硬さは骨よりも硬く、身体の中では最も硬いといわれています。ですが、乳酸などの酸によって容易に溶かされてしまうという弱点を持っているのです。
虫歯菌が出す乳酸によって歯が溶かされ、穴があいてしまった状態、これが虫歯とよばれる状態なのです。
主な虫歯菌
ストレプトコッカス・ミュータンス
虫歯菌は、前述したように何種類かありますが、その中でもストレプトコッカス・ミュータンスが大きく関与しています。この細菌は、乳酸の産生能力が高いだけでなく、歯の表面にくっつきやすいという性質を持っているからです。
虫歯の原因は、ストレプトコッカス・ミュータンスといっても過言ではないくらい、この細菌の歯を溶かす能力は大きいです。
ラクトバチルス菌
一方、ラクトバチルス菌は、ストレプトコッカス・ミュータンスほど歯を溶かす能力はありません。ラクトバチルス菌とは、乳酸菌のことです。何種類もあるので、正確には、ラクトバチルス属といいますが、ここではわかりやすくラクトバチルス菌といいます。
ラクトバチルス菌の出す乳酸はそれほど強くないので、エナメル質を溶かす働きはあまりありません。ラクトバチルス菌の虫歯形成への関与は、ストレプトコッカス・ミュータンスが作った虫歯を、歯の内部で更に拡大し、進行させる作用にあると考えられています。
ポイント
虫歯は虫歯菌と呼ばれる口内細菌によってもたらされる
複数の虫歯菌によって虫歯ができ、進行していくと考えられている
虫歯が多い人と少ない人の違いは?
虫歯が出来やすい人と、出来にくい人には、どのような違いがあるのでしょうか。プラークやプラークコントロールという言葉を聞いたことありませんか?
プラークとは、歯の表面についた白いカスの様なもののことです。歯の表面を爪や爪楊枝でこすったらとれてきます。この正体は、実は細菌の塊です。そのことからプラークは最近ではバイオフィルムというよばれかたもします。
プラークに含まれる細菌には、虫歯の原因菌だけでなく、歯周病の原因菌やカビの菌などいろいろな種類があります。プラークコントロールとは、こうした細菌の塊であるプラークを取り除くこと、すなわち細菌を取り除くことを意味します。
虫歯が多い人は、このプラークコントロールが不十分である可能性が考えられます。プラークコントロールがしっかりとできていないと、歯の周囲で虫歯菌が増えてしまいます。その結果、乳酸の産生量が増えてしまいますので、結果的に虫歯の発生に繋がってきます。
そして、プラークを構成する細菌の割合にも注目する必要があります。年齢や環境によって、多少変化することもありますが、その割合は基本的に変わりにくいものです。
虫歯が多い人は、プラークの中に占めるストレプトコッカス・ミュータンスの割合が大きい可能性が考えられます。ストレプトコッカス・ミュータンスが多いと、やはり乳酸の産生量が増加してしまいますので、虫歯を作りやすくなってしまいます。
ポイント
虫歯が多い人はプラークコントロールが不十分
虫歯が多い人はプラクの細菌比率にも特徴があるらしい
虫歯が多い人はどう対処していけばいいのか
虫歯が多い人はどうやって治療していくの?
まずは、優先順位をどう設定するかが大切になります。たとえば前歯の虫歯であれば外観に影響してきますし、奥歯の虫歯であれば噛み合せにくくなるので食事などに影響してきます。もちろん、歯が痛くて困っているときは、その歯を優先しなければなりません。
歯科医師の視点で考えれば、この虫歯を先にしておいた方がいいと思っても、患者側の希望と必ずしも合致するとは限りません。ですから、どの歯を優先して治療をしていくか、歯科医師が勝手に決めるのではなく、患者側の訴えを聞いて、治療計画を決めていきます。
また、子どもの場合、いきなり麻酔の注射を治療を進めると、次から泣き叫んだりして治療が進められないこともあります。そのため、虫歯があっても、まずは歯の掃除など、楽な治療から行い歯科医院の環境に慣れてもらうことを優先し、その上で、小さい虫歯から順次治療をしていくこともあります。
ところで、抜歯しないといけない様な歯がある場合に、患者がなんらかの病気を持っていることがあります。その病気の状態や治療内容によっては抜歯が可能かどうかを、医師に確認しなければならないことがあります。したがって、こうしたケースでは、医師への病状の確認が優先になります。
どうして虫歯の治療は一気にやらないの?
虫歯がたくさん出来ている時、何本も同時に並行して治療をして早く終わらせてほしいと思うのが一般的な思いではないでしょうか。ところが、一気にすることはあまりありません。これには、いくつかの理由があります。
虫歯の大きさにもよりますが、噛み合せが出来ないほど、虫歯が進行していることがあります。こうしたときは、被せものを入れて噛めるようにします。つまり、虫歯の治療とは、噛み合せの回復という側面も持っています。
たくさん虫歯が出来て、噛み合せが出来ない歯が多い時、残された歯や虫歯の歯でもかけていない部分で噛み合わせて、食事など日常生活を送っています。
この時、たくさんの虫歯を同時に削ってしまうと、どの位置で噛んでいたのかがわからなくなることがあるのです。
下顎は、頭蓋骨からぶら下がっている骨なので、きちんとした位置を再現するのが難しいという特性があります。この位置で噛んでいたと歯科医師が思っても、実は違っていたとき、しっかり噛めなくなってしまいます。
ですから、噛み合せが狂わないように治療しようとすれば、同時にたくさんの歯を一気に削って治療することは出来ないのです。
また、たとえば左右同時に治療したとして、右側の歯が腫れてきて噛めなくなった場合、左側を治療していたら噛むところがなくなってしまう恐れもあります。そんな時、左側が未治療であれば、そちら側で噛めたかもしれません。
こうした理由で、一気に治療を進めるのは得策ではありません。
虫歯が多くならないように何をすべき?
虫歯の原因は、虫歯菌が乳酸で歯を溶かすことにあります。その虫歯菌は、歯の表面に付着したプラークの中にたくさんいます。虫歯を防ぐためには、まずこのプラークをきれいに取り除くプラークコントロールを図ることが基本となります。
そのためには、毎日の食後の歯みがきを丁寧にしなければなりません。歯ブラシは、歯の表面を磨くのは得意ですが、歯と歯の間は不得手です。ですので、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも同時に使って、歯と歯の間まできれいに磨くようにしてください。
いくら頑張っても、とりきれないところが生じてきます。上顎の奥歯など、見えにくいところは磨きにくいものです。また、歯並びの関係で磨きにくいところがある場合もあります。
そこで、定期的に歯科医院に通って、歯の掃除を受けるようにしましょう。その時、歯みがきの方法を教えてもらうのも効果的です。
自分自身で行なう日々の歯みがきと、定期的に歯科医院でしてもらう歯の掃除の二人三脚で、プラークコントロールを十分行ない、虫歯になりにくいお口の環境を作っていきましょう。
ポイント
虫歯が多い時は、優先度を決めてから治療していく
虫歯を一気に治療しないのは噛み合わせの問題があるから
虫歯を予防するには日々のプラークコントロールが重要
歯医者さんでも虫歯の多い人はいるの?
『医者の不養生』ということわざがあります。「医者は、患者には養生することの大切さを説明する割に、自分自身の養生は意識していない」ということから生まれたことわざです。
このことわざは、『歯医者の不養生』と言い換えることも出来ます。もちろん、歯科医師ですから、プラークコントロールの大切さはよくわかっています。食後の歯みがきは、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを駆使して、外泊先でも歯みがきをしていることもあります。
けれど、困ったことに、自分自身では虫歯の治療や、歯石の掃除などは出来ません。しかも、歯科医師が休診日に他の歯科医院を受診したくても、そんな日は、たいてい他の歯科医院も休診にしているものです。
ですから、虫歯が多いとはいいませんが、治療が受けられなくて、そのままになっていることもめずらしくはありません。
ポイント
忙しい歯医者さんは歯が治せないこともある
※この記事は、歯科医の資格を保有している方によって執筆されました。
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