大震災10年 歯科所見で身元不明者の特定を・・・歯科医たちの挑戦【#あれから私は】|TBS NEWS


大震災10年 歯科所見で身元不明者の特定を・・・歯科医たちの挑戦【#あれから私は】|TBS NEWS

大震災10年 歯科所見で身元不明者の特定を・・・歯科医たちの挑戦【#あれから私は】
4日 11時01分
 震災で失った大切な人を遺族のもとに帰そうと、遺体の歯を記録しつづけた人たちがいます。身元の特定に奮闘する歯科医たちを追いました。

これは3.11から2日後に撮られた写真です。彼らが見ているのは、遺体の歯です。岩手県陸前高田市の米崎中学校の体育館は遺体の安置所になりました。歯科医が歯を調べるのは、遺体を家族の元へ帰すためでした。

「これが警察から。下矢作8って遺体の番号じゃないかと思うんですよ」

陸前高田市に住む福田利喜さん(62)。震災当時、叔母のサダ子さん(当時75)は市民体育館に避難しましたが、体育館が津波で流され行方不明になりました。

「避難所そこだから行くからって、それが最後だったんです。捜して歩くの大変だった」(福田利喜さん)

半年間、行方不明だったサダ子さん。見つかる決め手となったのが、歯でした。

「半年くらいしたら警察から電話がかかってきて、なんでこれ分かったんですかって言ったら歯型で分かったって。帰ってきたんだなって感じはしました」(福田利喜さん)

写真に写る千葉大の歯科法医学者・斉藤久子さん。陸前高田市で遺体の歯を調べる歯科所見を行いました。

「震災から1か月ちょっとたつと腐敗死体が入ってきましたので、白骨になった時、指紋はなくなっちゃいますけど(歯は)残る」(千葉大・法医学教室 斉藤久子准教授)

しかし歯科所見によって身元が判明した割合は、東日本大震災ではわずか8%。

「本当に歯科所見を使えば7割はいくはず。特に日本人は(歯の)治療が多いので」(千葉大・法医学教室 斉藤久子准教授)

東日本大震災による死者は1万5899人。このうち57人は、10年が経った今も身元が不明のままです。

1人でも多く身元不明遺体を減らしたい。斉藤さんは2016年、歯科所見の大切さを伝えるためにJUMPという団体を設立しました。先月には震災から10年を前にオンラインでシンポジウムを開催しました。

「多職種の専門家の人材育成、そして連携が重要」(千葉大・法医学教室 斉藤久子准教授)

警察官の濱田さんも東日本大震災で遺体の検視作業を行った経験から、歯による鑑定の大切さを若い世代に伝えています。

「(歯は)期間が相当長くなって発見された場合でも身元特定はしやすいのかなと印象はあります。非常に重要なセクションだと思っています」(千葉県警 捜査第一課 濱田昌也管理官)

JUMPの取り組みは始まったばかりです。

「やはりまず人材育成、それも多職種ですね。そういった方々を育てながら連携しながらやっていくことが重要」(千葉大・法医学教室 斉藤久子准教授)