インプラント治療に画期的変化 人工骨の開発・実用化に成功 - NEWS SALT(ニュースソルト)
インプラント治療に画期的変化 人工骨の開発・実用化に成功

ジーシー(東京都文京区)と九州大学の石川邦夫教授らは、世界初となる骨の無機成分と同じ組成の人工骨で、歯科用インプラントの周辺を含む領域でも使用可能な「サイトランス グラニュール」の開発に成功した。同領域における人工骨としては国内で初めて、薬事承認されたことを15日に発表した。
これまで、病気や事故で失われた骨を回復させるためには、患者本人の骨(自家骨)の移植が優先選択されてきた。しかし、自家骨を採取することは患者に大きな負担がかかり、また採取できる自家骨の量にも限度があるため、近年ではこれに替わる機能性の高い人工骨の開発が求められていた。人工骨には、他家骨(他人の骨、国内では認められていない)、異種骨(動物由来の骨)、合成骨(化学合成された骨)の3種類が考えられるが、他家骨と異種骨は安全性の確保に課題があり、合成骨は安全性を確保しやすいものの、治療効果の面で課題があるとされてきた。
石川教授らは骨の無機成分を分析し、ハイドロキシアパタイトのリン酸基の一部が炭酸基に置換された炭酸アパタイトであることを確認。さらに、顆粒状の炭酸アパタイトの合成方法はこれまで確立されていなかったが、炭酸カルシウムを元に、リン酸塩水溶液中での溶解析出反応を用いて炭酸アパタイト顆粒を人工合成する方法を世界で初めて見いだした。
この研究成果をもとに、ジーシーが2009~15年まで科学技術振興機構(JST)の支援を受け、その後は日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実用化を進めてきた。そして医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公的相談制度を用いての非臨床試験、および九州大学病院など複数の大学病院で行われた多施設共同臨床試験(治験)を経て、炭酸アパタイト顆粒の医療機器としての有効性および安全性が実証された。炭酸アパタイト顆粒は、骨の無機成分と同じ組成であるため、生体内で骨に置換できることが示された。
これまで歯科用インプラント治療においては、日本で薬事承認された人工骨がなかったため、自家骨を用いざるを得ない状況だったが、今回の炭酸アパタイト顆粒製品の承認によって、インプラント治療に画期的な変化がもたらされることが期待される。また、合成炭酸アパタイトが医療分野で用いられるのは世界初となる。
骨の無機成分と同組成の人工骨「サイトランス グラニュール」
画像提供:科学技術振興機構(JST)
(冒頭の写真はイメージ)
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農林水産省は6日、「平成28年度遺伝子組換え植物実態調査」の結果を発表した。同省は2006年度以降、セイヨウナタネやダイズの輸入港周辺地域で、遺伝子組換え植物の生育範囲や交雑の有無などを調べているが、今回は生物多様性への影響は認められなかった。
日本では、遺伝子組換え農作物等について、その系統ごとに法律に基づき、食品・飼料としての安全性や生物多様性への影響(運搬時にこぼれ落ちた種子が生物多様性に及ぼす影響を含む)について科学的な評価を行っている。その結果、影響がないと判断された場合に初めて、食品としての使用、栽培、加工、保管、運搬及び廃棄などを承認している。
今回は、すでに承認されている遺伝子組換えセイヨウナタネや遺伝子組換えダイズにより、生物多様性への影響が生じていないかが調査された。2015年度までの調査では、主に陸揚げ地点に近接する幹線道路沿いの植栽帯付近でこぼれ落ちたとみられる遺伝子組換えセイヨウナタネや遺伝子組換えダイズの生育が確認されていたが、2016年度はそれらの生育拡大や近縁種との交雑は認められなかった。農水省は、遺伝子組換え農作物等が生物多様性に及ぼす影響に関する科学的知見を一層充実させるため、引き続き調査を実施するとしている。
(写真はイメージ)
医療技術
世界初!骨と同じ成分で人工骨を開発 実用化へ 九州大
2018年02月18日 06時00分
事故や病気で骨を失った場合、従来は患者自身の骨を移植して再建する方法が一般的だったが、九州大学などの研究グループは世界で初めて、骨の成分と同じ人工骨の開発に成功した。すでに歯科用インプラント治療で使える人工骨として薬事承認されたという。
骨の再建手術には、体へ同化する効果が高いことから自分の骨を使う「自家骨移植」が一般的だが、患者の負担も大きく、欠損部分が大きい場合、骨の量にも限界があるためこの方法は使えない。人工骨には、亡くなった他人や動物の骨を使う方法もあるが、感染症のリスクなど安全性の問題などがあるため、日本ではほとんど行われていない。
九州大の石川邦夫教授らのグループが、骨を構成する成分の組成を調べた結果、約70%はリン酸カルシウムの一種である「炭酸アパタイト」だと突き止めた。以前から粉末状の炭酸アパタイトを作る技術は確立していたものの、体内に移植した場合、炎症を起こすおそれがあるとして臨床現場で使うには問題があった。そこで石川教授らは、炭酸アパタイトをブロック状や顆粒状にする技術の開発に成功し、歯科医療メーカーのジーシー社が実用化。
徳島大学病院や東京医科歯科大学の附属病院など複数の医療機関で臨床試験を行った結果、人間の体内で骨に置き換えられることが実証された。
上アゴの奥歯部分にインプラントを埋入するうえで、骨が十分に存在しない22人の患者を対象にした臨床試験では、炭酸アパタイトの顆粒を移植した半年後にインプラント手術を行ったところ、すべての患者で新しい骨が形成されたという。
歯科用インプラント治療の分野ではこれまで、薬事承認された人工骨がなかったため、自家骨を使うしか移植方法がなかったが、今回初めて薬事承認されたことで、高齢者など自家骨の採取が難しかった患者や、骨が不足しているためにインプラント治療が受けられなかった患者にも治療の道が開かれると期待されている。



